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  • 執筆者の写真Takeshi Nasu

不動産(土地)相続の利点とは


 日本は相続税が世界の中で高税率国のひとつであるということは先日ご紹介しました。

とはいえ国外に資産を移転したり、或いは海外の国籍や永住権を取得してまで相続対策を講じるには高いハードルがあります。またそういったコストを払ってまで実行する経済的メリットを持っている方もそう多くはありません。


 では日本に居住しながら相続に備える場合、どういった対策が考えられるのか。

本コラムでは相続の中でも評価額が相対的に高額になることが多い不動産の相続評価について考えてみたいと思います。


■相続財産の内訳

 まず相続税の課税対象となる財産の内訳はどのようになっているのか見てみましょう。国税庁が統計情報としてデータを公開しています。

 最新データのH27年分によると課税対象となった取得財産の合計は 15兆6362億円。その内訳は下記のとおりとなっています。


        取得財産価額 ※H27

・土地   : 5,939,957百万(38.0%)

・家屋構築物: 834,336百万( 5.3%)

・事業用財産: 62,681百万( 0.4%)

・有価証券 : 2,336,792百万(14.9%)

・現金預貯金: 4,799,552百万(30.7%)

・家庭用財産: 23,118百万( 0.1%)

・その他  : 1,639,805百万(10.5%)

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・合計    15,636,241百万



 相続財産の中でもっとも取得財産価額が多いのは土地(不動産)で約5.9兆円です。また家屋構造部(いわゆる上物)も不動産でこれが約0.8兆円。両者を合わせると不動産全体の相続上の評価額は約6.7兆円です。これは広告市場(約6.8兆円)に迫る規模の不動産が毎年相続されているということになります。


 また相続財産種類を個別に見た場合でも土地の5.9兆円(38%)が最も多いことから財産価額が高い相続財産であることが分かります。


■土地評価の考え方

 本題です。相続を受けるときは全ての財産を金額に換算する作業が発生します。

 ちなみに現金・預貯金については当たり前ですが相続の前後で価値が変わることはありません。現金・預貯金の残高がそのまま相続財産評価額となります。

(本コラムで伝えたい主旨からインフレ・デフレなどの通貨圏全体のマクロ視点は外して書いてます)  一方で土地相続の場合は価値が変わる可能性があります。その評価作業は次のような考え方で導き出していきます

           土地評価額 ≒ 基準価額 ー 個別事情 ー 特例


 ベースとなる基準価額は国税庁の路線価方式(または倍率方式)を使って価値換算をします。

(路線価は実際の土地の売買相場と比較して低い単価で設定されていることが多く、この時点で時価より低い評価額となる場合が多い。)

 これに加えて、幾つかの特例措置(詳細後述)を利用することによって更に評価額を下げることができます。その結果、現金で受けるより相対的に評価額を下げることができる場合が多くあり、節税効果を期待することができます。


順を追って土地の評価方法について見ていきましょう。


■路線価方式と倍率方式

 まずベースとなる土地の基準価額については原則として以下の二通りで算出します。


路線価方式(路線価×地積)

 土地が市街地にある宅地の場合は国税庁が定める路線価を用いて算出します。主な道路沿いに路線価が定められていますので、原則として所在する土地が接している路線価と地積(㎡)の乗算が評価額となります。

 ※路線価:国税庁が定める路線に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価格


・倍率方式(固定資産税評価額×倍率)

  市街地以外の土地については概ねこちらの方式になります。

固定資産税評価額( 土地の所有者に毎年郵送で送られてきている書類)に国税局長が地域毎の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額による評価方式です。

 ※倍率:国税局長が定める評価倍率表

路線価、倍率は国税庁のHPをご覧ください。


■土地の評価を下げられる場合がある“個別事情”について

 基準価額に関する個別事情は土地評価額の算出に影響を与える要素なので予定納税額を考える上でとても重要です。

 どのような要件があるのかを見ていきましょう


 個別事情の主な例としては次のようなものがあげられます。

 ・500平方メートル以上の広大地

 ・形が不整形

 ・間口が狭い

 ・奥行きが長い

 ・崖地が含まれている

 ・セットバックが必要

 ・私道に隣接している

 ・日照が悪い

 ・騒音がひどい

 ・悪臭がする

 ・土壌汚染

 ・上下水道管が埋められている

 ・元墓地跡地である

 こういった個別事情を持った土地を相続する場合には、具体性の如何によっては土地の評価を下げられる可能性があるのです。詳しい情報は専門家にご相談頂くことをお勧めします。


■小規模宅地等の“特例”

小規模宅地等に該当する場合には、土地の評価額を80%減額することができます。 平成27年改正前については適用される面積が240平方メートルとされていましたが、

改正後は330平方メートルに拡大されました。


例えば、自宅の敷地が1平方メートル50万円で300平方メートルの場合で小規模宅地の特例の適用がない場合には、相続税評価額は1億5000万円(50万円×300平方メートル)となるところ、小規模宅地の特例の適用がある場合には相続税評価額は3000万円(50万円×300平方メートル×(100%-80%))となり、実に1億2000万円もの評価減となります。



小規模宅地等の特例の実際の適用可否の判断にあたっては、専門家にご相談ください。





 如何でしたでしょうか。

 不動産とりわけ土地については様々な評価ルールがあることでケースによっては現金・預貯金よりも大幅に評価を抑えて相続できることがわかりました。もちろん現金のような流動性の高い資産に比べ、不動産は文字通り流動性が低い資産になります。また所有しているだけで固定資産税等が掛かりますし、売買においても様々な手数料や税が発生しますので一定の考慮があるのも理解できます。

 どちらが有利かという視点は個別事情によるので定性的な答えは出ませんが、こういった制度をそれぞれの相続事情に照らし合わせて上手に活用する視点がポイントです。



★ポ イ ン ト

相続において、評価額が変わらない現金に対し不動産の場合は課税評価額を減少させることができる場合があります。関連制度を上手に活用した土地相続は相続税の節税につながる場合があるのです。
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